世界中で人気のボーカロイド(VOCALOID)「初音ミク」の生みの親で,クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(本社:札幌市,創立:1995年)代表取締役の伊藤博之・京都情報大学院大学(KCGI)教授による特別講義が2020年10月30日(金),新型コロナウイルス感染防止のためオンラインで実施されました。本特別講義は京都コンピュータ学院(KCG)京都駅前校・KCGI京都駅前サテライト6階大ホールで定期的に行われていますが,今回はZoomウェビナーを使用。講義は英語同時通訳とともにライブ配信され,ホール収容人数にとどまらない多くの学生が,コンテンツビジネスの第一人者の話をじっくり聞くことができました。伊藤教授は「初音ミク」誕生の経緯や成長ぶり,音声技術・3DCG技術への取り組み,国内外での幅広い活躍について映像を交えて説明しました。学生との質疑応答もオンラインで行われました。
「初音ミク」は2007年8月31日に誕生したバーチャルアイドルです。歌詞とメロディを入力すると音声合成で歌ってくれるソフトウェアであり,身長158センチ,体重42キロ,16歳の人気「キャラクター」でもあります。国内外でライブコンサートが開催され,日本文化を世界に発信するクールジャパンの象徴的存在になっています。
「初音ミクから学ぶデジタルコンテンツの可能性」と題した講義で伊藤教授は,クリプトン社の事業を紹介した上でコンピュータ・ミュージックの基礎を解説しました。そして「パソコン上で楽器を再現するためのソフトウェアをバーチャル・インスツルメント(仮想楽器)といいます。『初音ミク』は歌声のバーチャル・インスツルメントとして誕生しました。ヤマハさんが開発したボーカロイドという歌声合成技術を使っています」と説明しました。
キャラクター化が功を奏し,音楽だけでなく「初音ミク」の容姿のイラストやCG,コスプレなどを創作しインターネットに投稿する人たちが現れ,世界規模で創作の連鎖が広がりました。伊藤教授は「『初音ミク』がキャラクターとしてどんどん登場して人気になっていくと,いろいろ権利クリアランスの必要性が出てきます」と話し,権利処理のために環境を整えた経緯などを説明しました。
「初音ミク」は誕生から13年が経ち,クリエイターによる二次創作・三次創作の結果,歌や音声にとどまらず,ダンスや動画,コスプレ,フィギュアなどへとその表現方法は大きく広がりました。ファッションやオペラ,ロボット,ゲーム,和太鼓,テレビの人気アニメキャラクターとのコラボレーションなど,商品化も続いています。伊藤教授は「いろんな方々に創作してもらい,その結果価値を高めていくべきじゃないかと,たくさんのコラボレーションを行う対応をしています」と語りました。
「初音ミク」は国内外で公演,イベント出演などがめじろ押しです。2020年は新型コロナウイルス感染拡大前の1月にロンドン,パリ,ベルリンなどでヨーロッパツアーを行いました。2021年は世界中のファンに向けて「初音ミク」のライブを配信する「MIKU EXPO 2021 ONLINE」を計画しています。国内でも活躍中で,オンラインでライブを行うほか,2013年から毎年開催している3DCGライブと創作の楽しさを体感できる企画展のイベント「初音ミク『マジカルミライ』」を2020年も11月に大阪,12月は東京で開催する予定にしています。
伊藤氏は,2013年4月にKCGI教授に就任しました。国際的な活動と技術革新が認められ,2013年秋の藍綬褒章を受章しています。KCGIとKCGには相互に授業を聴講できる仕組みがあります。KCGIのコンテンツビジネス関連を学ぶ学生だけでなく,KCGのアート・デザイン学系,デジタルゲーム学系,コンピュータサイエンス学系情報処理科IT声優コースなどコンテンツ関連の学生たちも,伊藤教授の取り組みから多くを学ぶことができます。