元KCG情報科学研究所長で,輻射輸達論の世界的権威の天体物理学者,上野季夫(うえの・すえお)先生=京都大学・金沢工業大学名誉教授=が10月19日,逝去されました。100歳でした。地球環境問題の科学的実証に大きな貢献をされたほか,本学の教育の展開に多大なるご寄与をいただきました。謹んで哀悼の意を表します。
通夜,葬儀はお身内だけで営まれるということです。
上野先生は京都大学理学部卒,理学博士。同学部・金沢工業大学教授のほか,パリ天体物理学研究所・米国航空宇宙局客員研究員,南カリフォルニア大学・マサチューセッツ州立大学客員教授などを歴任し,1988年にKCG情報科学研究所の初代所長に就かれました。同所長時代にはKCGグループの情報科学研究を牽引されたばかりでなく,KCGグループ内で国際ワークショップを度々開催され,ボストン校設立にご尽力くださるなど,KCGグループの国際化に大きく貢献していただきました。
上野先生が研究された輻射輸達論は「放射伝達論」ともいわれ,地球環境問題を科学的に実証する重要な研究分野として注目されています。上野先生は地球環境問題が起きることをいち早く察知し,人工衛星データを用いて科学的実証に精力的に取り組まれたことでも知られています。上野先生が創設された人工衛星の地球環境問題に取り組むグループから,現在宇宙開発事業団で活躍する「衛星データの大気補正」サイエンスチームが生まれています。このように長きにわたって第一線で研究活動を続けられ,その間,国際的な共同研究や学会活動に大きな足跡を残されました。
京都コンピュータ学院の長谷川靖子学院長やNASAゴダード宇宙科学研究所ディレクター・コロンビア大学地球環境科学科客員教授 ジェームス・ハンセン博士など上野先生に教えを受けた研究者も多く,2011年3月には,上野先生の100歳の誕生日(2月26日)を記念して京都コンピュータ学院京都駅前校でシンポジウムを開催したばかりでした。
時代の先を読む眼の確かさに,周囲の研究者たちは敬服,真面目で温厚なお人柄で人望も厚い方でした。心よりお礼申しあげるとともに,安らかなご永眠をお祈りいたします。