京都情報大学院大学(KCGI)の客員教授に今春就任した,千葉博人先生によるスタートレックの講演会が8月1日,京都コンピュータ学院(KCG)の京都駅前校で開かれました。スタートレックは1966年にアメリカで放送が始まったテレビのSFシリーズで,日本では『宇宙大作戦』というタイトルで当時放映されました。これまでに5つのテレビシリーズと12本の映画が制作されていて,世界的に人気の高いSF作品です。千葉先生は,日本でのスタートレック第一人者で,日本語公式ホームページ(STARTREK.ne.jp)のサイト運営もしています。またコンピュータの歴史にも造詣が深いことから,KCGコンピュータミュージアムの副館長も兼務しています。
「SF『スタートレック』で見る未来の技術」と題されたこの講演は,KCGサマーフェスタのイベントの一つとして開かれました。千葉先生によると,SF作品としてのスタートレックの特徴は,非科学的な発想を避けて,論理的にできるだけ矛盾のない技術や出来事を描く点にあるということです。作品に登場する宇宙船や様々な機械類も,当時の科学技術の水準に照らして,舞台となっている2260年代の未来に実現可能かどうかを考えて考案されました。そこで今回のイベントでは千葉先生が,当時のSF世界で想像された科学技術が50年後の今日,どこまで実現されているかについて講演しました。取り上げられたのは,宇宙船,転送装置,通信機,記録メディアなど,様々な未来技術や機器類です。それらの中から3点を紹介します。
比較その1:宇宙船はどこまで実現されたか?
スタートレックで科学技術の粋を結集して作られた代表的な人工物と言えば,宇宙船USSエンタープライズ号です。全長289メートル,全幅132メートルの巨艦で,ワープ航法で光より速く宇宙空間を進みます。これに匹敵する宇宙船は実現されているでしょうか?現代で最大の宇宙船と言えば国際宇宙ステーションですが,残念ながらこの宇宙ステーションはいろいろな点でエンタープライズ号よりも劣っています。全長は108.5メートルと小さく,宇宙空間も自由に移動できません。何よりも光より速く飛べないという最大の欠点を持っています。
比較その2:データ端末は実現されたか?
スタートレックでは乗組員が,厚めのノートパソコンほどの大きさのデータ端末を片手に持って,データをペンで書き込んだり,表示させたりしていました。この種のデータ端末は実現されているでしょうか?現代のiPadと比較してみましょう。iPadはデータ端末よりも小さくて軽いのに,データの入力・表示だけではなく,GPS機能や音声・写真・動画の記録機能も兼ね備えていて,より多機能です。この種の機器では現代の技術が,SFの想像力をすでに凌駕しています。
比較その3:転送装置は実現されたか?
スタートレック最大の発想とも言われているのは,生物や物体を瞬間的に移動させてしまう転送装置です。その原理は対象物を量子に分解して転送し,目的地で再構成するというものです。この転送装置は実現されているでしょうか?残念ながら,それと比較可能な装置さえも開発されていないというのが現状です。転送装置はスタートレックの未来技術の中でも実現が一番難しいとされています。将来の本格的な研究が待たれます。
スタートレック日本語公式サイト
http://www.startrek.ne.jp/
サマーフェスタ2015
http://kcg.edu/summer-festa/2015/