京都情報大学院大学(KCGI)・京都コンピュータ学院(KCG)の長谷川亘統括理事長が会長を務める,一般社団法人 京都府情報産業協会の新春セミナーが1月14日,京都情報大学院大学 京都駅前サテライト大ホールで開かれ,株式会社クリエイティブスタジオゲツクロの代表取締役で,脚本家・演出家・プロデューサーの作道 雄(さくどう ゆう)氏が,「21世紀の映像 〜ITの普及と共に〜」と題して講演し,KCGの学生や一般の人たち多数が聴講しました。作道氏は大阪府出身で,京都大学を卒業後,2011年に劇団「月面クロワッサン」を旗揚げし,2013年にはKBS京都で放送された連続ドラマ「ノスタルジア」を劇団として制作しました。今年の夏に公開される滋賀県が舞台の映画「Mother Lake」では脚本を担当し,現在は京都府南丹市美山町で映像による地域活性化に取り組んでいます。
講演の中で作道氏は,ネットの普及と映像関連機器の低価格化で,映像に接する機会と映像を制作・発信する機会がともに飛躍的に増大するなかで,主に映像を生かした地方創生・地域活性化がどのようにできるのかについて,自分の体験を交えながら話しました。最初に取り上げたのが,琵琶湖で謎の生物を目撃したことから始まる,子どもたちのひと夏の冒険を描いた映画「Mother Lake」です。作道氏はこの作品を「地域活性化映画」と捉え,地元企業の出資がベースとなり,滋賀県内で出演者オーディションとオールロケを敢行し,世界の映画祭に出品することで,滋賀県の知名度を挙げ,この地を観光客が訪れてくれるようにしたいと言いました。「Mother Lake」は2016年夏,滋賀県内で先行ロードショーが始まり,順次封切られます。
続いて,著名な観光地や名産品がない地域が映像を通して,地方創生をするにはどのようにしたらよいかというテーマを取り上げ,人口が約4500人の南丹市美山町での試みを紹介しました。作道氏がそこで実践している方法は,地域の「ライブ感」をキーワードに,地元の人にカメラを持ってもらって,自分の好きな場所を映像で紹介してもらうというものです。映像のプロではない地元の人々が撮る映像だからこそ,作為性のない演出がなされ,地域への愛着が素直に出るのであり,その映像をYouTubeで積極的に発信することで美山町の魅力が広まり,引いては移住者の増加にもつながることを狙っています。
映像制作の敷居が低くなってきている現在は,プロと非プロとの間の映像表現の境界が狭まってきていて,一般の人々がネットを通してより手軽に映像を発信できる時代であり,市民がクラウドファンディングなどを通じて,ローカル放送局の番組の作り手側に回れるチャンスが増えてきていることも,その一例として紹介されています。ITの普及がもたらしたこの機会を利用して,地域の人たちが地域の魅力を主体的に映像で発信してほしいとして,作道氏は講演を結びました。