5月24日(金)に,KCGグループ創立50周年記念イベントの一環として,デジタルメディアのパイオニアで,米国デジタル・ドメイン社の創設者 スコット・ロス氏による講演会「VFXと世界的パラダイムの変化」を京都情報大学院大学 京都駅前サテライト大ホールで開催しました。ロス氏は自らが手掛けた映像を紹介しながら,CG(コンピュータグラフィックス)を使った特殊効果・VFXの魅力と課題について語りました。また,聴講した学生に対し,映画製作など仕事を成功させるには,コミュニケーションが最も重要な要素のひとつであると強調しました。
ロス氏は,新たな技術とデジタル配信の到来によって,これまで映画の世界で中心だった「ムービースター」の数が少なくなり,興行収入もCG,VFXを駆使した作品の方が上位にあるといった現状を紹介。ただ,このように世界中の映画製作者が新しい時代に合った作品を次々と完成させる中,衰えを隠せない「ハリウッド」の現状を憂い,「世界的に競争が激しくなる中,ハリウッドは資金や人材確保の面で足踏みしている。利益配分などビジネスのあり方を変えていかないと,ますます立ち遅れてしまうだろう」と話しました。
引き続き「Transformers」など自ら手掛けた作品を,VFXを施す過程を交えながら紹介。これを受けて学生から▽映画一作品に,VFXには何人くらい従事するのか▽映画におけるシナリオのウエート▽日米の映画製作におけるワークフローの違い―といった質問が相次ぎました。ロス氏は最後に「日本人と一緒に仕事を何度もしましたが,総じてコミュニケーションが上手という印象があります。グループでの仕事では重要な要素となるものですので,みなさんも学生時代から,しっかり身につけてください」と呼び掛けました。
ジェームズ・キャメロン氏とともにデジタル・ドメイン社を創設し,最大手のプロダクションにまで育てあげたロス氏は,1970年代にマイルス・デイビスグループなど多くのバンドと巡業し,80年代にはジョージ・ルーカス氏が設立したILMのゼネラルマネージャーに就任。89年にはNTTで「創造力」をテーマとした組織改革をサポートしました。その後,日本の14の大学で,デジタルメディア関連学部の設立を支援。人脈も広く,日本では特に故・黒澤明監督と親交がありました。アカデミー賞を主宰する「アメリカ映画芸術科学協会」,エミー賞を授与する「アメリカテレビ芸術科学協会」のメンバーでもあり,世界20ヵ国以上で,創造的手法やテクノロジーについて講演しています。
記念講演会「VFXと世界的パラダイムの変化」
http://kcg.edu/50th/events/VFXと世界的パラダイムの変化/