従来のシステム開発の欠点を克服した手法として,近年注目を集めている「アジャイル開発」について,株式会社永和システムマネジメント(本社:福井県福井市)の代表取締役社長・平鍋健児氏が6月8日,「アジャイル開発の最前線 ビジネスとエンジニアの協働チームづくり」と題して,京都情報大学院大学(KCGI)京都駅前サテライト大ホールで講演し,その長所や最前線での開発状況についてグループ校の京都コンピュータ学院(KCG)の学生に向けて熱く語りました。(株)永和システムマネジメントは,アジャイル開発を得意とする会社で,また,子会社の株式会社アフレルは,KCGとKCGIが開催に協力し,初・中級エンジニアがロボット制作を通して企画開発力を身に付けるETロボコン関西大会のスポンサー企業でもあります。
アジャイル開発は,発注するビジネスサイドと開発サイドが一体となってチームを作り,作業工程を短いサイクルに分割し,その中で分析・設計・実装まで行ってとりあえず稼働するシステムを作る手法です。もっとも重要な部分を先に選んで動くシステムを開発して,それをユーザーと開発者が共同で検証し,アイディアを出し合いながらフィードバックを得て,改善を重ねていくことから,進行に従って開発手法も上達していき,必要な機能を十分に備えたシステムが最終的に出来上がります。最初の仕様書に従って完成まで一気に設計する,従来の「ウォーターフォール型」開発の持つ,長い工期,途中での設計変更の困難さ,結果的に多く残ってしまう不要な機能などの欠点を克服した手法として,近年広く取り入れられています。講演では,このアジャイル開発では,「プロダクトオーナー」と「開発チーム」,それに両者を支援する「スクラムマスター」の三者から成るチームで作業を進める「スクラム」という進め方が,最近流行していることも紹介されました。また,IT開発の現場では,各自のタスクを記した紙をホワイトボードに貼り付けて,仕事の流れと進捗状況を可視化するアナログ的な管理手法が,意外に効果的であるという裏話も披露されました。平鍋氏は最後に,「会社を変えてやろうという意気込みで入社して,どんどん提案して変革していってください。その際,アジャイル開発の知識は強い武器になります」と,将来のIT業界での活躍が期待される学生たちを激励しました。