7月2日は,京都コンピュータ学院(KCG)の創立者で初代学院長である長谷川繁雄先生の命日である「閑堂忌」。その日を前に2017年7月1日,各種催しが執り行われました。京都情報大学院大学京都駅前サテライト大ホールでは,KCGのルーツである「和歌山文化研究会(和文研)」時代に,大学当局が公認する「京都大学学生親学会(京大親学会)」のスタッフとしてお付き合いがあった藤居宏一先生(岩手大学名誉教授)が記念講話し,和文研が当時,京都大学と教育ビジネスを共にしていたことが紹介されました。長谷川繁雄先生,現学院長の長谷川靖子先生とも京都大学出身ではありますが,藤居先生のご説明により,KCGは教育活動の点からも,京都大学が生んだ私立教育機関であることが証明されたといえます。
藤居宏一先生の演題は「KCGの前史と大型計算機時代の思い出」。当時,京大親学会でアルバイトをしていた藤居先生は和歌山の担当となり,大学の先輩でもある長谷川繁雄先生・靖子先生と出会いました。長谷川繁雄先生・靖子先生は,和歌山の生徒の学力・成績向上と把握を目的に,京大親学会の高校受験模擬試験である「アチーブメントテスト」普及拡大に力を注がれていました。
藤居先生のご説明によると,京大親学会は,大学当局から公認を受けた「サークル」ではありましたが,名古屋大学や大阪大学,九州大学など他の協会組織と連携して広範囲な学生ネットワークを構築しながら,西日本を中心に中学,高校生ら受験生向け模擬試験や通信教育を展開,1960年当時,事業規模1300万円(現在なら2.5~3億円),構成員の学生が100名以上という巨大な教育事業者でもありました。この説明により,KCGのルーツである和文研が,京都大学公認の経済活動を伴う教育ビジネスの一部を担っていたことは明らかで,KCGは京都大学が生んだ私立教育機関であることが証明されたといえるでしょう。
藤居先生は「先輩であり失礼ではありますが,長谷川繁雄先生とは馬が合い,大変かわいがっていただきました。私が母子家庭で,学費はもちろん生活費を稼がなければならない事情を理解してくださっていたのだと思います」と振り返り,「京都から交通機関を乗り継ぎ,何時間もかけて和歌山に通いましたが,長谷川靖子先生に料理をふるまっていただくなど温かく迎えてくださいました」と懐かしみました。
「長谷川繁雄先生は当時30歳ぐらいでしたが,若者に負けない青年のような情熱と正義感を持っておられました。とりわけ教育には,靖子先生とともに人生をかけておられたのだと思います」と強調,その後は永らくお会いする機会がないまま,最近,偶然インターネットで長谷川繁雄先生と靖子先生がKCGを設立したことや,繁雄先生がお亡くなりになったことを知ったといいます。アチーブメントテストはその後,一元的な才能評価に疑問があるとして廃止しましたが,和文研としては入塾生の学力を知る機会になり,入塾後の才能開発に役立ったと評価しています。
講話に先立ち藤居先生は,京都駅前校で過去の貴重なコンピュータを展示・保存しているKCG資料館を,中・高・大学とも同級生というKCG洛北校顧問 石田勝則先生の案内で見学され「声を出さずにはいられないほどの懐かしさで興奮しました。このコレクションは他にはない,日本のコンピュータ教育の歴史遺産です」と話されました。
長谷川繁雄先生は1986年7月2日に享年56歳でご逝去され,今年で没後31年になります。「閑堂」とは長谷川繁雄先生の雅号で,「世俗から離れ,瞑想にふける閑静な空間」を意味しています。学生や教職員たちは長谷川繁雄先生の菩提寺である百萬遍知恩寺を墓参,情報処理技術教育のパイオニアとして尽力された長谷川繁雄先生のご遺徳を偲ぶとともに,KCGグループのさらなる発展を祈りました。また学生有志が京都駅前校で出した模擬店では,手作りのたこ焼きなどが販売され,行事に活気を添えました。