私ども日本人の平均余命はかなり長くなって参りました。それに従っていろいろな社会的現象が認められてきました。例えば,(1)高齢でも働ける人々が増加している,(2)若年層の精神的成熟に要する期間の分散が大きくなっている,などが考えられています。すなわち,自分自身の,いわゆる生涯設計の重要さに気がつき,それを追求始める年齢層のばらつきが大きくなってきていると思われます。いまのところ,親の収入によって子供の将来が決まる確率が高いといわれていますが,このような傾向を野放しすることは,大きな社会的損失をもたらし,将来に禍根を残すことになるでしょう。単一の生涯設計しか選択肢がないような閉塞社会には将来はないでしょう。
京都情報大学院大学に2007年4月からお世話になってきましたが,専門学校と専門職大学院の組み合わせは,予期される社会的閉塞感を取り除くために極めて有効であると感じています。なぜなら,学生自身が,自らの生涯設計の重要さに気付き,かつ自分自身の適性について一定の認識を育んだものが多いと感じられます。学生は専門職に就こうというかなりの目的意識を持っています。通常の大学の学生よりは,より多くの選択肢から自身の将来を見据えているように感じます。
これからの専門学校は,専門職大学院大学と連携を取ることによって,これまで最終学歴が専門学校卒業であったものが,学生の将来の選択肢が増え,気がついた時から勉学を始めることが可能となり,しかもかなり長い間,専門職の地位を保つことが可能な社会に成りつつあるという,さらに,高校,大学,大学院といった,かなり単線の生涯設計が複線化されるという,望ましい形が見えてきたといえるのではないでしょうか。
ここにおける教育が極めてきめ細やかであることとあいまって,専門学校と専門職大学院大学との連携はますます重要性を増してくるものと期待されます。
長谷川 利治