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佐藤 孝司

Takashi Sato

経歴

  • 名古屋工業大学工学部情報工学科卒業
  • 鳥取大学大学院工学研究科博士後期課程修了(社会基盤工学専攻),博士(工学)
  • 元日本電気株式会社主席主幹職,上席ソフトウェアプロセス&品質プロフェッショナル
 

メッセージ

「Do the right thing, Do things right」

アメリカの経営学者であるウォレン・ベニス教授がマネジャーとリーダーの違いを表した言葉です。私が前職のITメーカーに入社した頃(30年以上前です),先輩からこの言葉をソフトウェア開発になぞらえて,「正しいものを作る,正しく作る」ことの指導を受けてきました。当時は,大規模なソフトウェアを大人数で作るため,“正しいもの”であること,すなわち目的を明確にした上で,それが達成できたかを確認できることや,“正しく作ること”,すなわち間違って作った箇所を早く見つけ早く修正して,後戻り作業を減らし良質な製品を出荷することが,ソフトウェア開発において,とても重要であることを体現してきました。

私は,前職ではソフトウェア生産技術,プロジェクト品質管理技術,組織の開発プロセス改善技術などを基軸として,大型汎用計算機の基本ソフトウェア開発プロジェクトから,金融・医療・官公庁・某省国家プロジェクト等の社会基盤システムに至るまでの幅広い領域において,多くのITプロジェクトに関わってきました。そして,どのプロジェクトにおいても,この“正しいものを作る,正しく作る”ことの難しさを痛感してきました。

「デジタル変革時代」

近年はデジタル変革時代と呼ばれ,特に,クラウドサービスやAI機械学習の急速な進展は,ソフトウェア開発周辺にも大きな影響を及ぼしています。顧客価値の多様化やスピード重視により,作りながら考える,お試しをするなどの開発の仕方も変化しています。既存業務のIT化が飽和した社会では,さらなる価値を求めるには,お客様自身も,目的となる“正しいもの”は何か,どこに価値があるのかが見えなくなっているのが実情かもしれません。

“正しいもの”が何であるのかという目的やゴールがはっきりしないので,“正しく作る”ことも難しくなり,作ったものが正しいのかどうかさえも判別し難くなってしまいます。

「技術を正しく学び,正しく使って,混沌とした不確実な時代を乗り越える」

このような変革期において,ソフトウェア開発技術者が備えるべき重要な資質が2点あると考えます。

1点目は,“技術を正しく学ぶ”ことです。例えば,プログラミング言語の技術の進展は目覚ましく, 短いpythonコードでAI機械学習のモジュールを容易に作れてしまう時代です(ただし精度向上のチューニングが容易ではないことは言うまでもありませんが)。したがって,技術進化のスピードに負けずに,技術を正しく速く修得していくことが,従来にも増して,とても重要であると思います。

2点目は,“技術を正しく使う”ことです。求めている“正しいもの”が何であるのかという目的が不透明になり,また,AI機械学習では正解100%の答え合わせができないものを作るなど,技術者にとって混沌とした不確実性の高い時代です。技術を正しく適切に使うことは非常に高度な状況把握と判断力が必要になってきます。例えば,IoTシステムはノード間のインタフェースと機能分担がより複雑になり,大規模システムを構成する各所に正しく適切にソフトウェアを配置することが重要です。また,AI機械学習ではアルゴリズム以上に,事前に準備する学習データの品質が重要になります。クラウドサービスでは運用しながら高速に価値向上サイクルを回していく必要があります。

技術を正しく最適な状況で使うために,周辺にまで気を配り視座を高めることが重要になってきていると考えます。相手が何をしたいのか,全体の状況はどうなのかを考えずに,技術者が技術に溺れて自己満足な仕事をしないように注意が必要です。

「明るい未来に向かって」

“人から始まるデジタル変革”というIT人材白書2019(独立行政法人情報処理推進機構)のサブタイトルが象徴しているように,IT人材への社会の期待は高まり続け,活躍の場も拡大しています。

技術を正しく学び,正しく使って,お客様から感謝いただける素敵な技術者を目指して,みなさんと一緒に切磋琢磨しながら学び合っていきましょう。明るい未来に向かって,貪欲に新しいことにチャレンジしましょう。

担当科目

  • データベース特論

専門分野

  • ソフトウェア工学
  • ソフトウェア品質保証
  • ソフトウェアエンジニアリング
  • 計算機システム

業績

著書・記事ほか

  • 誉田直美, 佐藤孝司, 倉下亮, 森岳志, “ソフトウェア品質判定メソッド~計画から出荷判定までの審査と技法~”, 日科技連出版, pp.41-107, 2019年8月
  • AIプロダクト品質保証コンソーシアム自動運転技術チーム, “AIプロダクト品質保証ガイドライン(2019.05版)”, AIプロダクト品質保証コンソーシアム(QA4AIコンソーシアム), pp.119-146, 2019年5月
  • 佐藤孝司, 纐纈伸子, 橘克一, 下村哲司, “アジャイル開発のスクラム手法における定量的管理の導入事例”, 日本信頼性学会誌, Vol.41 No.1, pp.9-17, 2019年1月

論文

  • T.Sato and S.Yamada, “Application of Software Factory to Advanced Software Quality Management”, Asia-Pacific Journal of Industrial Management, Vol. VI, Issue 1, pp.30-38, March 2017.
  • 佐藤孝司, 山田茂, “品質マップによるソフトウェア分析手法の提案”, プロジェクトマネジメント学会誌, Vol.18, No.5, pp.35-40, 2016年10月
  • T.Sato and S.Yamada, “Analysis of Process Factors Affecting Software Quality based on Design Review Record and Product Metrics”, International Journal of Reliability Quality and Safety Engineering, Vol.23, No.4, pp.1650011.1-1650011.11, July 2016.
  • T.Sato and S.Yamada, “Qualitative Analysis of Process Factors Affecting Software Quality Based on Design Review Record”, Proceedings of the 9th Japan-Korea Software Management Symposium, pp.36-41, November 2016.
  • T.Sato and S.Yamada, “Software Quality Management Based on Process and Product Metrics Analysis with Software Factory”, Proceedings of the 13th International Conference on Industrial Management (ICIM2016), pp.332-339, September 2016.
  • 佐藤孝司, 山田茂, “ソフトウェア信頼性に影響を及ぼす設計レビュー記録の質的要因分析”,プロジェクトマネジメント学会2016年秋季研究発表大会予稿集, pp.189-194, 2016年9月
  • T.Sato and S.Yamada, “Qualitative Quality Analysis of Process Factors Based on Software Design Review Record Affecting Software Reliability”, Proceedings of the 22nd ISSAT International Conference on Reliability and Quality in Design (ISSAT/RQD2016), pp.117-121, August 2016.
  • T.Sato and S.Yamada, “Software Quality Analysis Practice and Verification based on QUALITY MAP System”, Proceedings of the 9th International Conference on Project Management (ProMAC2015), pp.380-386, October 2015.
  • T.Sato, “Quality Improvement Practice and Software Quality Analysis based on the QUALITY MAP System”, Proceedings of the 8th Japan-Korea Software Management Symposium -Trends in Management Technologies and Human Resource Development-, Keynote-Speech, pp.7-20, November 2015.
  • 佐藤孝司, 山田茂, “品質マップによるソフトウェア品質分析手法の提案”, プロジェクトマネジメント学会2015年秋季研究発表大会予稿集, pp.487-492, 2015年10月
  • 佐藤孝司, “NECにおけるソフトウェア品質向上への取り組み”, 日本科学技術連盟クオリティフォーラム2014報文集, pp.76-81, 2014年11月
  • T.Sato, “Quality Improvement using the QUALITY MAP Technique”, Proceedings of the 6th World Congress for Software Quality(6WCSQ), CD-R, 12pp., July 2013.
  • T.Sato, T.Mano and T.Takasu, “Comprehensive Evaluation for Quality, Productivity, and Delivery of Software Development Products”, Proceedings of the 1st World Congress for Software Quality(1WCSQ), 10pp., July 1995

所属学会

情報処理学会,プロジェクトマネジメント学会,日本品質管理学会,日本信頼性学会(編集委員会委員)

学産官共同活動

  • 独立行政法人情報処理推進機構 国際標準推進センター評価モデルワーキンググループ内OSS評価手法およびOSS活用指針ガイド検討会委員, 2010-2013;
  • AIプロダクト品質保証コンソーシアム運営委員兼元自動運転技術チームリーダー, 2018-
  • 日本科学技術連盟SQiPソフトウェア品質保証部長の会企画委員, 2009-