メッセージ
私は大学では自動制御理論が専門でした。大学を出てナカミチというメーカーに勤めてMOドライブの開発に従事しました。それは3年という短い期間でありましたが,光学装置の研究と制御装置の試作をしたことは,私にとってはとても貴重な経験でした。まず驚いたのは「不安定だとモノは壊れる」という当たり前の事実で,数値計算上で変数の値が非常に大きくなっても問題はないのですが,現実には,何十時間,何十万円もかけた試作機が一瞬にして壊れてしまうことです。理論ばかり勉強していた私にはとても衝撃的なことでした。その一方で,制御実験がうまくいかないときに数値計算の基本的な知識をほんの少し使うだけで本質的な改善がされることもありました。私は「理論のための理論」に陥ることは警戒をすべきであると思いますが,「理論は現実には全く役立たない」という見方も間違っていると思います。
私は,これからICTプロフェッショナルを目指す方には,この理論と現実のバランス感覚を大切にしていただきたいと思っております。