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真野 宏子

Hiroko Mano
真野 宏子 教授

経歴

  • 早稲田大学文学士,同大学院博士後期課程満期退学(美術史専攻),博士(文学)
  • (ドイツ)ベルリン・フンボルト大学哲学科美術史専攻博士課程留学

メッセージ

柔軟性とグローバルな視点を持って

私が専門とする美術史は,美術に関する理論や,美術作品ならびに芸術家についての研究を主とする学問領域で,取り扱う範囲は多岐にわたり,方法論やアプローチもさまざまです。ただ,共通するのは人類が生み出した作品であり,研究者は可能な限りオリジナルと向き合う努力をします。失われた作品でも,同じ作家や流派のもの,同時代のもの,類似のもの,制作された地域のものなどを調査し,関連文献を精査し,対象作品の概観をつまびらかにしていきます。

今世紀初めまで,そうした調査のお供は重い一眼レフと大量のフィルムが一般的でした。デジタルカメラは高価なうえ解像度にまだ難があったのです。発表や授業用にはリバーサルフィルムで撮影し,フィルムをスライドにします。フィルム代も現像費もばかになりません。撮影の成否は現像するまで不明です。現在も調査は欠かせませんし,カメラやスキャナーも必要ですが,その場で状態の確認ができ,コピーもデータの送受信も容易で,ネットを通じ世界中から入手可能な画像や文献が増えるなど,隔世の感があります。

もちろんこれらはほんの一端です。技術の革新は常に行われてきましたが,今世紀に入ってからのITの進歩は目覚ましく,あらゆる分野で多くの可能性を開いています。かつての夢が現実となる一方,それに伴い新たな課題も生まれています。その都度ルールや解決策が練られているものの,国際化・情報化が加速するなか,もはや一国で対処する限界を超えてもいます。近い将来その前線で中心的な活躍をするのはみなさんです。ぜひ,世界的な視点と,世界のなかで生きている自覚と矜持を忘れず,輝かしい未来を夢や可能性の実現に邁進してください。意欲にあふれたさまざまな立場の方,さまざまな国の方が,ここに集い,ここで学び,ここから巣立ってくださることを期待してやみません。

担当科目

  • リーダーシップセオリー
  • プロジェクト基礎演習
  • ICT実践コミュニケーション

専門分野

  • 美術史,芸術学,美学

業績

受賞

  • 早稲田大学美術史学会学会賞

学術論文

  • 「カンディンスキー作《いくつかの円》(1926年):抽象絵画における空間の問題」美学会,『美學』 第182号(第46巻第2号), pp.33-43,1995
  • 「カンディンスキーの『抽象絵画』における造形上の問題:視覚体験としてのキュビスム」早稲田大学美術史学会,『美術史研究』第35冊, pp. 45-66,1997
  • 「カンディンスキーとロベール・ドローネーに関する一考察」早稲田大学美術史学会,『美術史研究』第37冊, pp. 23-44,1999
  • 「読み取り難い絵画:カンディンスキーのキュビスム観」広島芸術学会,『藝術研究』第14号, pp.31-46、2001
  • 「ヴァシリー・カンディンスキーとアンリ・ル・フォーコニエ」國學院大學,『國學院雑誌』第104巻第10号, pp.18-31,2003
  • 『ヴァシリー・カンディンスキーとキュビスム』(博士論文)早稲田大学,2004
  • 「パリ時代のカンディンスキー:ピカソとの対立をめぐって」美術史学会,『美術史』第160号, pp.348-363,2006
  • 「イリヤ・レーピンの《思いがけなく》(1884-88年):ロシア・リアリズムと印象主義をめぐる一考察」共立女子大学文芸学部,『共立女子大学文芸学部紀要』第62集, pp. 47-75,2016
  • 「シャガールの『磔刑像』について」共立女子大学文芸学部,『共立女子大学文芸学部紀要』第66集,pp.51-79,2020

調査報告論文

  • 「カンディンスキーの作品におけるキュビスムの造形的関与」鹿島美術財団,『鹿島美術研究年報』第16号別冊,pp.381-400,1999

項目執筆

  • 監修:黒江光彦,木村三郎・島田紀夫・千足伸行・千葉成夫・森田義之編,(分担執筆)『西洋絵画作品名辞典』三省堂,1994
  • 岩波書店編集部編,(事項執筆)『西洋絵画作品名辞典』(2分冊)岩波書店,2013

翻訳

  • マティアス・アルノルト著『エドヴァルト・ムンク』PARCO出版,パルコ美術新書,1994
  • マティアス・アルノルト著『アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック』PARCO出版,パルコ美術新書,1996
  • 共訳:岡田奈保,真野宏子,安松みゆき,クルト・レオンハルト著『ポール・セザンヌ』PARCO出版,パルコ美術新書,1996
  • 共訳:島勉,松下ゆう子,真野宏子,ディートリヒ・シューベルト著『オットー・ディックス』PARCO出版,パルコ美術新書,1997
  • トルステン・ブルーメ著「デッサウのバウハウス:学校と工房」『バウハウス・デッサウ展』図録,pp.239-249,産経新聞社,2008
  • ペーター・パンツァー著「ドイツにおけるジャポニスム:芸術と好奇心の間にある日本への熱狂」,日独交流史編集委員会編,『日独交流150年の軌跡』雄松堂書店,pp.111-122,2013

新聞寄稿,書評

  • 「主張する石:ウルリヒ・リュックリーム展の印象」東京新聞夕刊,1995(11/8)
  • 「2011年回顧・芸術(美術書)」読書人,「週刊読書人」2011(12/23)
  • 「2012年回顧・芸術(美術書)」読書人,「週刊読書人」2012(12/21)
  • 「2013年回顧・芸術(美術書)」読書人,「週刊読書人」2013(12/24)
  • 「スザンヌ・フェイジェンス・クーパー著,安達まみ訳『エフィー・グレイ:ラスキン,ミレイと生きた情熱の日々』」読書人,「週刊読書人」2015(10/9)
  • ほか,計13編

教科書/テキスト

  • 監修:高階秀爾,分担執筆:真野宏子,本間紀子,木川弘美,久々湊直子,笠松佐和子『西洋絵画史入門』(NHK学園通信教育講座「西洋美術への誘い」コーステキスト),pp.1-13,1999