メッセージ
獣医師であるのに,なぜコンピュータの世界へという質問をいただくことがよくあります。生命という非画一的で種々さまざまなものと,0「ゼロ」か1「イチ」かで,あたかも白黒はっきりさせようとするかのようなコンピュータは,各々の特徴をよく洞察し理解しようとすれば,共通点も見いだすことができ,それぞれとても興味深いものだと思っています。学生時代に,研究室に籠もり,インターフェロンの研究をしていたころ,BASICと出合いました。研究室での実験は,まるで広大な砂漠の中に埋められた一粒の砂金を探すような,途方もない作業でした。しかし,それに比べて,コンピュータはプログラムを作成していけば,たとえエラーがあったとしても,必ず一つの結果を明確に,しかも速く導き出してくれます。その点において誠に興味深く,BASICやその他プログラミング言語にのめり込んで行った記憶があります。実際に,獣医師としても臨床経験をしまして,治療に力を尽くしましたが,弱ってやがて死に至る動物たちに対しての人間の無力さを痛烈に感じ,想像以上の深い悲しみと失望に陥ったことがありました。命は,コンピュータのようにデバッグすれば再度実行というわけにまいりません。その後,思うところあって進路を転向し,メーカー系のシステムエンジニアとして働き始めました。汎用機,TSS,クライアントサーバモデルの時代を経験し,1995年あたりからはインターネットに触れ始めることになります。当時は,京都コンピュータ学院情報システム室長として,京都コンピュータ学院の初期のサイトを立ち上げました。その後は学校を離れ,自分なりに多くのプロジェクトを経験し,まるで草の根ネットワーカーのように,また,地道なエンジニアとしてやってまいりました。今回ご縁があり,京都コンピュータ学院のグループ校である本学大学院の教壇に立つことになりました。自身の数限りない失敗の経験も含めて,学生のみなさんに多くの情報,ノウハウをお伝えできればと思っています。
IT(ICT)の力をアップさせることが,日本の国力アップに繋がると信じています。一緒に悩み,苦しみ,プロジェクトの達成感も感じながら新しいことに挑戦し,楽しいIT(ICT)の世界を創造していこうではありませんか。