メッセージ
ITと金融の関係について考えてみます。金融業務はもともと,数字の世界であり,数値処理に力を発揮するコンピュータとはきわめて親和性が高く,金融業務の歴史は機械化の歴史といっても過言ではないほどです。そこでは長らく,業務の効率化がターゲットであり,ITがそれを支援する手段という位置づけでした。なお,この関係は金融に限らず多くの産業分野で共通しています。ITが支援の役割を担うゆえ,IT技術者は現場で働く人が描いた設計図通りに,コンピュータを組み立て,ソフトウェアを書けば良かったのです。ところが,ITの急速な進歩は演算,記憶の面にとどまらず,人間しかできないと思われていた判断,推論にも利用できることを明らかにし,融資や資産運用の分野では人にとって代わる存在と見なされるまでに成長しました。そうなると,量の深化が質の変化を起こしたのです。すなわち,業務設計とIT化は一体のものになり,2つの間に厳密に線を引くことなど,不可能になりました。そうすると,IT技術者に求められる資質も変化を起こします。設計図を待つ受け身の存在でなく,自ら業務を分析,洞察し,場合によっては業務そのものを設計することも求められるようになってきたのです。その方が「考える人」「作る人」といった分業体制よりはるかに効果的,効率的な場合が多いのです。まさに,IT関係者にとって今まで経験したことのない別次元の世界が始まりました。その先導役を皆さんに期待します。開拓者の苦労はありますが,皆さんの前途は洋々です。開拓者魂と困難を克服する力を本学で身につけてください。