メッセージ
私は,これまで「通信工学」,「オペレーションズリサーチ」,「道路交通制御」などを学んできました。「通信工学」の研究としては,非同期時分割多重方式によるマルティメディア通信方式を1960年代前半に提案することから始まりました。我が国においては,旧有線電気通信法が有効であった頃ですから,注目されることはなく終わってしまいましたが,後になって自分の考えがそんなには間違っていなかったことを知り,自信がつきました。
京都大学の計画工学講座へ転勤してから,「オペレーションズリサーチ」に親しむようになり,その応用分野として「道路交通制御」の現実に関わる機会を得ました。これは,私にとって重要な経験をもたらしてくれました。道路上の自動車を制御するのではなく,自動車に乗っている生身の人間である運転者の意志決定を補助するために,運転者にどのような道路関係情報を提供すれば良いのかを考えるべきだとの考えを得ました。「道路交通制御」システムは明らかに人間を含むインタラクティヴな情報システムであると理解するに至りました。
私は,主に都市内の有料高速道路の「道路交通制御」に,40年を超える期間,勉強させていただきました。私どもの年代で通信工学を勉強してきた人間にとっては,主として数学モデルに依存してきたと思っています。ある意味で人間らしさを失ったシステムについて考えてきたといえます。数学モデルに依存することの利点は当然考慮しなければなりません。モデルの構成とその基本的立場を,他者に明白にしやすい点はことに重要です。ある公理系の元での論理構造を明白にできます。そのモデルの中に人間らしさをどのように含めていくのかが問題です。このことが可能になった時,私どもは新たな知見を獲得するのです。このための手法として,たとえばシステムダイナミックス手法が,かなり確立した手法として,有効であると考えられます。
京都情報大学院大学で学び,研究することは,必ず,私どもの視野を広げてくれます。新しい地平を開くことができると確信します。